KANEKA OLEDは、
人と光がやさしく共存する
未来を示しています。

照明設計について考えるとき、空間から自然と光が現れるような建築を理想としているため、かねて照明器具自体の在り方に疑問をもっていました。
光が主役で望ましいアトモスフィアを醸し出し、現代の感覚と古代の感性をつなぐような永遠性を体験できるのが光の本性です。懐かしい思い出には必ずその時の光の印象が伴います。光を空間に演出する場合、本能的な反応が可能になり、多くの人々とその体験を共有できます。
光の中には膨大な数の情報が存在しています。百聞は一見にしかずということわざのように、光は視覚が多くの情報を把握できる手伝いをします。しかし、通常の光源はむき出しになっていることが多く、影との対比が激しいため、まぶしさを覚え、観ることのできる範囲を制限されているように感じてしまいます。
長年かかって開発されたKANEKA OLEDはやさしい光です。突き刺すような照明ではなく、包容力のあるふんわりとやわらかい光を感じます。KANEKA OLEDの光源は小さなパネルでできており面から発光されます。光はすでに面で拡散されているので、従来の照明とは異なった次元で生まれてきています。この形式は将来電球が姿を消す未来を想定しています。
まぶしさを抑えたやわらかな光に包まれると、目への刺激が少なく、作品の細部までじっくり鑑賞できるように感じます。自然光に近い心地よい光であり、人々の体験を主軸に考えられています。その光は、通常青色が強いLEDに比べて赤色が入り、暖色系がよみがえるスペクトラムで構成されているため、今まで見えなかった色彩が美術品鑑賞の際に鮮やかに再生されます。微妙なフォルムや色彩を見事に見分けることができます。
このユニークな機能はかなり進化したテクノロジーと人間の知覚力が共生して成り立っています。実際の事例としては、コネチカット州にあるアルバース財団のギャラリーです。著書の“Interaction of Color”など色の相互作用を主流とするジョセフ・アルバースの作品は普通の照明では見えにくいのですが、色と色の間に現れる別の色のバイブレーションが生き生きと現れました。
また、テキスタイルアーティストのアニ・アルバースの作品も細かい織り目が判別できるようになりました。繊細な配色も鮮やかに見えてきました。
紫外線や赤外線も抑えることができるので、今まで埋もれていた古美術品の価値を新たに発見する期待も大きいです。
未来の照明を考察するKANEKA OLEDのイノベーションは、空間と人間と光が共存共生できる時代を示しています。

撮影:Michael Vahrenwald