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スペシャルインタビュー ニューライトポタリー

照明の常識に挑み、
有機ELで新たな
可能性を拓く

株式会社ニューライトポタリー
代表照明プランナー
永冨 裕幸 氏

株式会社ニューライトポタリー様は、おもに商業施設向けの照明計画・デザインを手掛けるオフィスです。使用素材の質感と精度の高さを兼ね備えたモノづくりも大きな特長です。同社代表 永冨裕幸氏がモットーにしているのは、個々の店舗や施設の独自性を踏まえた、スペシャルな照明空間を生み出すこと──。そんな永冨氏の発想力にフォーカスしながら、カネカの有機EL照明パネル=OLEDを選定されたねらいなどについて、お話をうかがいました。

「このパネルには、LEDにはない可能性があるはずだ」

 それは、2013年にイタリア・ミラノで開催されていた世界最大規模のインテリア見本市「ミラノサローネ」でのことでした。見本市に足を運んだ永冨氏が、カネカの展示ブースで目にしたのは、わずか1.1mmという極薄のOLEDが面発光している場面でした。
 「カネカさんの担当者からは、演色性の高さなど、有機ELの主な特性を説明していただきました。その時に直感したのは、このパネルにはLEDにはないいろいろな可能性があるということ。とりわけ面発光が産み出す柔らかな明かりは、光源を直視できるという点で大きな強みだと思いましたね。たとえば光源そのものを“魅せる”ような照明デザインを手掛けてみたいなと、当時からずっと考えていました」(永冨氏)
 このユニークな発想をカタチにする機会は、イタリアでの出会いから2年後にやってきました。

「作品の色味をありのままに展示するのに適した光源」

 2015年7月。大阪市でアクセサリー作家と内装設計会社がタッグを組み、「AIDA」という斬新な企画展が開催されました。その照明計画を担当したのが、永冨氏でした。「会場構成を行った設計会社様は、[過去と近未来][鉄とアクセサリー]といった、対比する要素をテーマに設定していました。加えて作家様からは、アクセサリーを効果的に展示できるような照明にしたいという要望が出されました。双方の要件を突き詰めていくと、光源にはカネカOLEDが最適だと考えたのです」その理由について、永冨氏は次のように説明します。
 「まず、至近距離から展示物を照射しても影が強く出ないことですね。演色性にも優れていますから、作品の自然な色味を来場者にご覧いただくことができます」 つまり、指向性の強いLED照明とは異なり、面発光により全体を包み込むように照らし、ありのままの色合いを表現できるという点が、永冨氏から高く評価されたのです。また、カネカOLEDは最先端の照明技術を象徴する存在であり、企画展のテーマと合致したことも、採用に至った決め手のひとつでした。
 完成した展示会場は、館内の照明を最小限に絞り、カネカOLEDをむき出しのまま使用するという、斬新なものでした。「いつか、光源そのものを“魅せる”ような照明デザインを手掛けてみたい」――永冨氏が2年間温め続けてきたプランが、実現した瞬間でした。

大阪市で開催された企画展「AIDA」の、“過去と近未来”を感じさせる展示会場。メインとなる光源には、カネカOLEDが採用された。ボタンアクセサリーだけが有機EL照明によって浮かび上がる、美術館のような空間が実現している。

 アクセサリー作家や来場者から好意的なリアクションを得たことで、永冨氏は「今後、インスタレーション的な商品展示や先鋭的な空間デザインが求められる案件などに、OLEDを用いた照明計画も提案していきたいですね」と話します。

厚さ1.1ミリだから、デザインの邪魔をしない。
映り込みも、上手く利用できる

 2015年末、大阪・西心斎橋に「THE WALL HOTEL」というデザイナーズホテルが開業。幅広い層の宿泊客が利用しています。このホテルには、標準的なビジネスホテルよりもオーセンティック(本物感)で洗練された内装が施されています。
 内装設計を担当していたデザイナーは当時、Instagramに投稿されていた独創的な照明器具に着目。それは、永冨氏の手掛けたものでした。「自宅で使うために製作した照明器具で、真鍮の板をL字型に曲げ、裏側に白熱球を取りつけたオブジェ的なものでした」
 「ホテルのルームサインに適用できないだろうか?」デザイナーからのこんな相談を受けて、永冨氏は特注照明の製作を担当することになります。「自宅用の照明器具をそのままホテルに適用すると、側面から見たときに白熱球が丸見えになり、洗練されたデザインとは言えなくなります。そこで、光源をカネカOLEDに変更して設計・製作することにしたのです」
 完成したルームサインは、L字型の真鍮板2枚を組み合わせたものであり、真鍮板の裏側にカネカOLEDを取り付けた、独創的でデザイン性の高い構造です。1.1ミリという極薄の照明パネルならデザインの邪魔をすることがなく、やわらかな光が広がることで番号の部分に映り込む照明がきれいに見える――。こうしたメリットが、カネカOLEDの採用された理由でした。

© Nacása & Partners Inc.

カネカOLEDを用いた、特注製作のルームサイン。大阪・西心斎橋「THE WALL HOTEL」各フロアの通路に設置されている。

 「照明計画において、映り込みというのは本来NGです。しかしOLEDを使えば、映り込みを上手く利用した照明デザインが実現できると考えました。この案件では、光源を直接見せるのではなく、面発光ならではのやさしく綺麗な光を映り込ませることで、ルームサインを演出したのです」業界ではタブーとされていた手法をあえて行った意図を、永冨氏はこのように説明します。
 ホテルの各フロアには、有機ELからの光の反射によって、ルームサインの周囲に水の揺らぎのような表情が付加されています。「先端テクノロジーを用いながらも、宿泊者の皆様に安らぎを与えるようなアナログな空間を、ホテル内部に創出できたと思います」と永冨氏は述懐します。


株式会社ニューライトポタリー
URL http://www.newlightpottery.com/
永冨裕幸と奈良千寿による、照明計画・設計を行うスタジオ。商業空間や展示会向け特注照明の計画・デザインに、多くの実績を持つ。金属や石、陶磁器などを用いた工芸的な質感と、工業製品としての精度の高さを兼ね備えたモノづくりが、大きな特長である。最近は一般消費者向け照明器具の製作・販売も開始している。

永冨氏へ、一問一答

Q:もし、カネカOLEDが世の中に存在しなかったらTHE WALL HOTELの照明計画はどのようなものになっていたでしょう?
A:とても困っていたと思います。なぜなら、カネカのパネルは他の光源では代替できないものだから。当初のアイデアではなく、全く違う特注照明を製作していたでしょうね。
Q:施工時に苦労したことは?
A:真鍮板の裏側に、カネカOLEDを固定する方法に悩んだことです。デザイン性を損なわないよう、厚めの両面テープを用いて工夫しながら施工することで、うまくパネルを固定することができました。
Q:今後、実施してみたい照明プランは?
A:カネカOLEDの、光源を直視できるという利点を活かした照明計画です。
Q:永冨氏にとって「快適な空間」とは・・・?
A:愛猫と戯れることができる空間ですね。

カネカ担当者が語る、
「永冨氏の発想力と照明デザイン」

株式会社カネカOLED事業開発プロジェクト市場開発グループ井上慎也

「われわれ有機EL照明メーカーの常識を打ち破るような永冨氏の発想には、いつも驚かされています。
THE WALL HOTELの案件における、映り込みを上手く利用した照明デザインは、まさにその典型例。もし、カネカOLED以外の光源を使っていたら、ルームサインのデザインを変更しない限り部屋番号を均一に照らすことはできなかったでしょう。 [薄さ]と[面発光]という、カネカOLEDならではの特長を活かした使い方をしていただき、当社としてもうれしく思っています。ニューライトポタリー様が今後手掛ける新たな照明計画に対しても、メーカーとして最善のサポートをしていくつもりです」